「優しさ」の基準 

 
フライパンや鍋などの調理器具を載せるガスコンロの部品を"ごとく(五徳)”といいます。 
ごとくは炎にさらされるだけではなく煮汁の吹きこぼれや焦げてこびりついた脂を時々掃除をしなければならない部品でもあります。
 
つまり「人の手に触れる部品」なのです。
 
掃除のとき主婦が触って手を切って怪我をしないように、ごとくには安全な
「優しさ」
の基準が必要です。
 
お客様の「ごとく」のエッジや切り立った部分の安全性についての要求仕様は
「主婦が濡れた手で触って手が切れないこと。」
という抽象的なものでした。
 

 こだわりのキッチンツール

 

 
つまり「ごとく」のエッジや切り立った部分の安全性は
「手で触れてみて大丈夫ならいい」という曖昧な尺度だったのです。
 
ごとくを研磨するという仕事が始まる時、
西村技研がお客様から求められた品質のテーマは、
「客観的に評価することのできる具体的な安全指標を示すこと」でした。
 
私たちはこの課題に対して投影機やマイクロスコープを使用して研磨によって加工される
エッジや切り立った部分の丸み寸法(R寸)を数値で提示。
「客観的に評価」することができることに加えて「厳格な加工手順書」で常に均一な高品質での加工を行っています。
もちろんお客様からは高い評価を頂戴しました。

 


「ぴかぴか」だけが研磨じゃない

 
「トレーをビンテージ化することはできますか?」
 
バレル研磨は表面をツルツル、ピカピカにするのが一般的な仕事です。
ビンテージ化して欲しいという前代未聞の逆のご依頼は私達にも初めての経験でした。
 
「新しくできる店舗のコンセプトにマッチしたビンテージ感のある
金属トレイがどうしても欲しい。世の中に無いが、なんとか手に入れたい。」
 
という依頼主である店舗用什器専門商社様の熱いこだわりに応えるため、このビンテージ化プロジェクトをお引き受けしました。
 
まず私たちはビンテージ化ってどういうこと?という謎解きから始めました。
 
色んな意見を出し合った結果、それは長く使われて光沢が無く
「一面に細かいキズが入っていて古びた感じかなあ。」
 という認識に至ったのです。 

「光沢仕上げ」と「逆転の発想」

 
 

加工する材料は鏡のようなステンレス製のトレイ。
これをザラザラにするために私たちは普段行っている加工とは逆のこと。
つまり傷をつけるという加工にチャレンジしました。
 
普段はピカピカに磨くことを使命とする研磨剤(メディア)。
ビンテージ化にするにはどの研磨剤がよいのか。
また、どのコンパウンド(合成薬剤)がよいのか。
研磨時間はどのくらいが適切なのか。
何度も試行錯誤を繰り返しました。
 
それはまるで金属で再現するデニムのビンテージパンツという感覚です。
 
何度も失敗を繰り返しながらもついに完成。
マットな質感を持つオリジナルトレイは東京都内のオシャレなベーカリーで活躍中。
お客様の期待を裏切りません。


オートバイレースのプロショップで目立つ仕上がりへの挑戦

 
欧米での需要が主なオートバイレース用の駆動部品である日本製スプロケットホイール。
 
そんな市場でオートバイ用ギアメーカー様からいただいたテーマは
「加工精度の高さを要求するオートバイレース用のスプロケットホイールの研磨」でした。
 
レース用スプロケットホイールはロード用オートバイ以上に高い耐久性と軽量化を求められているので、
 
 
ホイールの厚さは一般のホイールの約半分しか無く、チェーンの幅を確保するために歯先は互い違いに設計されています。

 「世界」で活躍

 
表面が凸凹した材料の高精度なバレル研磨は高度な技術を要します。
 
研磨剤(メディア)と加工方式の選定、順序、加工時間など多くの経験と論理的な思考が求められます。
 
西村技研のスタッフにはバレル研磨だけではなく、その前後の加工プロセスにも精通した者が少なくありません。
研磨するということは、前段階のプレス技術や跡段階のメッキなどのプロセスを
知らなければ出来ないことがあります。
 
技術と知識を持った職人技を駆使。多くの検証を繰り返した結果、品質が高く伝導ロスの少ないスプロケットを実現。
オートバイレースの盛んなアメリカやヨーロッパから順次認知され、日本でも多くのオートバイレーサーに愛用されるにいたりました。